
出張時の移動時間に仕事をしました。当然、労働時間ですよね?
お客様からのご相談例をもとに「出張の移動時間は労働時間?」問題について見ていきましょう。
ご相談例
京都勤務の従業員Aが、顧客先(東京)との会議のため6時台の新幹線で移動する必要が出ました。普段なら20分で出勤できる勤務先と違い、3時間強も移動時間がかかります。移動時間中、会議の準備のため資料チェックや資料作成などの仕事をこなしました。
「移動中も仕事してるんです。だから、新幹線に乗って仕事をし始めた時間から始業開始ですよね?」との社員からの質問に対するご相談です。
社労士 回答
会社から移動時間中に具体的な書類作成を指示し、現地に到着するまでに返信するよう求めた場合などは労働時間に該当する可能性があります。(具体的な指示+報告)
ただ、今回の場合、会社が移動時間中に仕事をするよう業務指示をしたのではなく、報告も求めていませんでした。この場合、労働時間とは言えません。
今回のご相談事例の「出張の移動時間は労働時間?」の取扱いで注意すべきは、
移動時間を使った具体的な業務指示や報告は差し控えることです。

出張時の移動時間の原則の考え方
「出張時の移動時間」について、原則となる考え方も見ていきましょう。
原則、出張時の移動時間は、労働時間にはなりません。これは、移動時間が日常の通勤と同様に従業員が「自由に利用できる時間」だと考えられているためです。ただし、次のような場合は労働時間とみなされる可能性があります。
①移動中における物品の監視等別段の指示をした場合
②物品の運搬それ自体が出張の目的である場合(運送業など)
③ツアー参加者の引率業務のサポートなど移動そのものに業務性がある場合や移動中の業務が義務付けられている場合
④移動中に会社から仕事に関する指示や命令を受けて仕事をしている場合
また、直行直帰ではない場合は下記のように考えられます。
◎出張先から会社に戻りそのまま業務をした場合
→出張からの戻り時間が労働時間になる可能性がある。
◎会社に立ち寄ってから移動した場合
→その後の移動時間は労働時間になる可能性がある。
(業務と業務の間の移動時間と解釈されるため)
【参考通達等】
通達(昭和33年2月13日基発90号)でも、出張のための休日の移動について、移動中における物品の監視等別段の指示がある場合の外は休日労働として取り扱わなくても差支えないとしている。
物品の運搬それ自体が出張の目的である場合(例:運送業など)やツアー参加者の引率業務のサポートなど移動そのものに業務性がある場合や移動中の業務が義務付けられている場合には労働時間になる(東京地裁平成24年7月27日判決参照)。
労務関係において、トラブルを起こさない運用を事前に対応しておくことは大切なことです。
今回のご相談例のように従業員から問合せがあったときに慌てることのないよう原則の考え方も含めご確認ください。