
持ち帰り残業は労働時間にあたる?
もし突然、従業員から「今まで持ち帰り残業をしていました!残業代を支払ってください」と言われたらどう対応しますか?
労働時間トラブルあるあるの1つとして、今回は「持ち帰り残業」について見ていきます。
労働時間の考え方について
労働時間について、どういった状況であれば該当するか、大切な2点は以下のとおりです。
① 労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間
② 会社から指示や命令が出されている時間
ちなみに「黙示の指示や命令が出ていると判断される場合」も労働時間に含まれる場合があるので注意です。
黙示の指示や命令とは・・会社が具体的に業務指示していなくても、従業員が労働せざる得ない状況に置かれていることを指します。
(具体例)
・休憩中に電話対応や来客対応を求められる場合
・始業前に制服等への着替えが必須で自宅からの制服着用が難しい場合
・持ち帰り残業が常態化しており、その状態を会社が認識しているにも関わらず放置している場合など
持ち帰り残業は労働時間?
持ち帰り残業を上記の「労働時間の考え方」に照らしていくと
① 会社の指揮命令下にあるか・・
⇨仕事を終えて帰宅した後の時間は、基本的に会社の指揮命令下に置かれていないと言えます。
② 会社の指示・命令がされているか・・
・自宅に帰ってからも仕事をするように会社は指示・命令を出していない
・持ち帰り残業を会社が認識していないし、放置もしていない
⇨という前提
結論、上記①②の場合、自宅に帰宅してから作業をしたとしても直ちに労働時間にはなりません。
※前提が大事です!※
持ち帰り残業を認識していて放置している場合は「黙示の指示」として未払い残業を主張される可能性が高いので要注意です。
労働時間と認定されるには「私生活上の行為と峻別して労務を提供して当該業務を処理したような例外的な場合に限られると思われる」(白石哲編著『労働関係訴訟の実務』第2版66頁・商事法務) との見解があるように、その認定は厳格になされる印象です。

ポイントは
◎業務指示に基づくものか
◎私生活上の行為(お風呂や食事時間など)と「峻別(明確に区分)」できるのか
という点ですね。
※参考※
「使用者からの指示の存在が認められることが大前提であり、指示に基づく業務が行われたことの立証が必要であるが、そのうえで、 私生活上の行為と峻別して労務を提供した労働時間の時間数を立証する必要がある。単にパソコンのログイン・ログアウトの記録やメール送受信記録だけでは立証として不十分であり、成果物や作成・変更履歴を示すなどしながら、その業務に専念した時間を具体的に立証する必要があろう」(佐々木宗啓編著『類型別労働関係訴 訟の実務』108頁・青林書院)
(在宅勤務との違い)
在宅勤務を導入している会社も多くなっていますが、在宅勤務と持ち帰り残業は全く別ものです。
在宅勤務は、所定時間(例:9:00~18:00)を自宅で「仕事だけ」しなさいという命令に基づいて行うもので、仕事場所、勤務時間について明確に業務指示をして行っています。
勤務時間が終わればフリーな時間であり、会社の指揮命令下からは外れます。

残業管理は事前申請制にするなどしっかりと対応しましょう
会社での残業管理はどうされていますか?
弊社の顧問先様では、「事前申請制」を導入されている会社様が多くあります。
事前申請制を導入していれば、
・残業が本当に必要なのかどうかが判断、調整ができる
・従業員も申請した時間を意識し、業務を終えられるよう効率的に動く
・・という風に互いに「時間」に対する管理意識がでると考えます。
仕事終わりに長い時間おしゃべりしてからタイムカード打刻されたら・・辛くないですか?
周りの従業員の士気にも影響してきます。
労働時間管理をしっかりとすることは、
・無駄な残業の削減
・業務の偏りがある場合の調整
・非効率な従業員の業務改善や指導
・ワークライフバランスの改善
・・など会社がより良い方向にもっていける1つの手段としても活用できます。
今一度、会社の労働時間管理をチェックしてみてください。