社労士コラム 2026年5月11日
通勤途中のケガ、どこまでが「労災」?
従業員が通勤中にケガをすることを「通勤災害」といい、労災保険の給付対象となります。しかし、帰宅途中で「寄り道」や「通勤に関係のない行動」をすると、原則として給付が受けられなくなるため注意が必要です。 今回は、間違いやすい具体的な事例をもとに、通勤災害について解説します。
1.「逸脱」と「中断」の基本ルール
通勤経路から外れたり、通勤とは無関係な行為をしたりすることを「逸脱」または「中断」と呼びます。
- 逸脱:通勤の途中で、就業や通勤とは関係のない目的で合理的な経路を逸れること。
- 中断:経路は逸れていなくても、通勤と関係のないことを行うこと。
これらがある場合、その間やその後のケガは、原則として通勤災害とは認められません。
2.【事例比較】飲み会後のケガは「業務性」がカギ

同じ「飲み会」でも、その目的によって通勤災害の扱いは大きく変わります。
× 認められないケース:仲間内での私的な飲み会
例:仕事帰りに同僚や友人と居酒屋へ立ち寄る
- 判断 : 居酒屋に立ち寄った時点で「逸脱」かつ「中断」とみなされます。
- 結果 : 店内でのケガはもちろん、店を出て通勤経路に戻った後のケガであっても、通勤災害とは認められません。
○ 認められる可能性があるケース:業務としての強制参加
例:会社が主催し、参加が義務付けられている「業務扱い」の懇親会
- 判断 : 業務の一環として判断されれば、会場から自宅への移動も「通勤」として扱われます。
- 結果 : 私的な寄り道(逸脱・中断)には該当しないため、帰宅ルート上でのケガであれば通勤災害として認められる可能性が高くなります。
3.「直行直帰」や「単身赴任」などの特殊なケース
通常の通勤以外にも、以下のような移動は「通勤」として認められる場合があります。
- 直行直帰の場合 自宅から直接現場(顧客先など)へ向かう、あるいは現場から直接帰宅する場合も、それが業務のための合理的な経路であれば「通勤」に該当します。
- 単身赴任者の「帰省」 転勤に伴い家族と別居している単身赴任者が、赴任先の住居と家族の住む住居との間を移動する場合も、一定の要件(就業の前後の移動など)を満たせば「通勤」とみなされます。
4.例外的に「経路復帰後」が認められる行為
日常生活上必要で、次のような「やむを得ない理由」により最小限の範囲で逸脱・中断した場合は、通勤経路に戻った後から再び通勤として認められます。
- 日用品の購入(スーパーでの買い物など)
- 職業訓練などの受講
- 選挙の投票
- 通院
- 家族の介護(要介護状態にある家族を継続的・反復的に行っている場合)
【注意点】 いずれの場合も、寄り道をしている「最中(店の中や介護先など)」に起きたケガは、通勤災害とは認められません。
5.まとめ

通勤災害かどうかの最終的な判断は、労働基準監督署長が行います。 認められた場合は「労災保険」、認められなかった場合は「健康保険」から給付を受けることになります。
万が一の際、スムーズに手続きを進めるためにも、当時の状況(時間、場所、目的)を正しく整理しておくことが大切です。